【管理栄養士が解説】『サプリメント』だけで栄養は摂れる?
錠剤だけでなく、ドリンクやデザートなどにも添加され、様々な形で目にするようになった「サプリメント」。そもそも、サプリメントと食品に含まれる栄養素に、違いはあるのでしょうか?
2019年08月27日
『サプリメント』と『食べ物』の違い
サプリメントには代替できない食べ物の効果って?
サプリメントに代表される、特定の栄養素を強化して作られた食品は「栄養補助食品」や「栄養機能食品」、「機能性食品」などと呼ばれ、数多くの商品が出回っています。 以前、こういった質問をされたことがありました。 「今利用しているダイエット用のプロテインドリンクには、一日分の栄養素がバランスよく含まれている、と書いてあります。だからそのドリンクだけ飲めば大丈夫ですよね?」 “大丈夫”という意味がどういった意味なのかにもよりますが、私自身はこの方に対して、「1日2食は食事を摂りましょう」とお勧めしました。 その理由は、「サプリメントは食べ物そのものに取って代わるものではないから」です。
トマトの栄養素を摂ること=トマトを食べることではない!
実は、食事摂取基準や栄養成分表示などで目にする栄養素は「存在が確認され、抽出に成功した成分の一つ」であって、食べ物に含まれる全ての栄養素の正体が分かっているわけではないのです。 私が栄養学を学んだ際に、指導教授から「トマトのリコピンを入れたサプリメントは作れても、トマトそのものをサプリメントにする技術は現時点では確立されていない」という話を聞いた際、とても衝撃的だったことを覚えています。
「野菜や果物そのものを摂取することが大切である」という実験結果も。
栄養素だけでは割り切れない食べ物の効果を感じる試験として、このような実例があります。 現在までの統計や研究の結果から、「でんぷん質でない野菜」や「果物」の積極的な摂取は多くの部位の癌を抑制する効果があることが証明されていました。 そこで、野菜類に多く含まれる「β‐カロテン」をサプリメントとして被験者に摂取させ、その効果を検証する、という試験が行われました。 その結果、β‐カロテンのサプリメントを摂取した群の癌の発症率が高くなり、試験が中断されることになりました。 この試験でわかったことは、「野菜や果物そのものを摂取することが大切であって、野菜などに含まれる栄養素を抽出して摂取することはその代替にはならない」ということです。
サプリメントはあくまで「補助」。上手に組み合わせましょう
あげた例は一例ですし、サプリメントの活用を否定している訳ではありません。不足している栄養素をサプリメントなどで補うことで、症状が緩和したり改善することも事実です。 ポイントは、サプリメントは「補助食品である」という点を忘れないことだと思います。 サプリメントだけで食事に代えてしまおう、と考えずに、両方を上手に組み合わせられるといいですね。
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著者
山本 亜由美(管理栄養士)
管理栄養士。その他糖尿病療養指導士、ダイエットアドバイザー、日本ジュニア野菜ソムリエの資格を持つ。糖尿病や生活習慣病の食事相談を始め、食を通じた健康の提案、行動修正を含めた肥満の改善の指導に従事。多い時で年間1500件以上の指導を担当。 現在は米国カリフォルニア州で子育てをしながら、アメリカの食習慣や栄養学に興味を持ち、学ぶ日々。
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